捻挫とは、関節に強い外力が加わることで、靱帯や関節包(かんせつほう)などの軟部組織が損傷するケガのことをいいます。関節が通常の可動域を超えて動いてしまい、その際に「靱帯が伸びたり、部分的に切れたり」してしまいます。
最も多く見られるのは「足首の捻挫」で、全体の約70~80%を占めます。手首、膝、肩などにも起こる可能性があります。
捻挫は一般的に靱帯(じんたい)と呼ばれる関節を支える軟部組織が損傷することで起こります。その損傷の程度によって、軽度・中等度・重度(I度〜III度)の3段階に分類されます。
分類 | 損傷の程度 | 主な症状 |
---|---|---|
軽度(Ⅰ度) | 靱帯が軽く伸びた状態 | 軽い腫れ、違和感、痛みがあるが歩行可能 |
中等度(Ⅱ度) | 靱帯が部分的に断裂 | 明らかな腫れと痛み、歩行困難 |
重度(Ⅲ度) | 靱帯が完全に断裂 | 強い痛み、腫れ、関節の不安定、歩行困難 |
・最も一般的で、特に「内返し捻挫」が多い(足首が内側にねじれる)
・前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)の損傷が多く見られる
・転倒時に手をついた際に多発
・三角線維軟骨複合体(TFCC)の損傷を伴う場合もある
・ボールスポーツや接触プレーで起こりやすい
・靱帯や関節包が部分的に損傷
・スポーツや交通事故で生じやすい
前十字靱帯・側副靱帯の損傷と診断されることが多い(※重症になると「靱帯損傷」と表現される)
捻挫は関節に強い力が加わったときに、関節を支える靱帯(じんたい)が過度に伸ばされたり、断裂することで発生します。日常生活やスポーツ中など、さまざまな場面で発生する可能性があります。
歩行中や走行中に段差につまずいたり、坂道で足を取られてバランスを崩した際に起こります。
バスケットボール、サッカー、バレーボールなどでは、急停止や方向転換、ジャンプ後の着地時に関節に強い負担がかかり、捻挫のリスクが高くなります。
足首が安定せず不自然な動きになりやすく、特にハイヒールは足関節の不安定性を助長します。
筋肉が弱っていたり柔軟性がない場合、関節の安定性が低下し、捻挫を起こしやすくなります。また、長時間の運動後は集中力や身体の反応が鈍くなり、リスクが高まります。
特に足関節捻挫では、内返し捻挫(足首が内側にねじれる動き)が最も一般的です。この場合、足首の外側にある靱帯(主に前距腓靱帯)が損傷するケースが多くみられます。
正しい靴選びや筋力トレーニング、ストレッチなどでバランス能力を高めることが、捻挫の予防につながります。
捻挫が起きた直後は、適切な応急処置をすることが非常に大切です。これにより、損傷の悪化を防ぎ、早期回復につながります。応急処置の基本は「RICE処置」と呼ばれるもので、次の4つのステップからなります。
痛みのある部分を無理に動かさず、できるだけ安静に保ちます。運動や負荷をかけるのは控えましょう。
氷や冷たいタオルで患部を冷やします。冷やすことで炎症や腫れを抑え、痛みを和らげます。15〜20分程度を目安に、直接肌に氷を当てずにタオルを挟んで行いましょう。
包帯やサポーターで患部を軽く圧迫します。これにより内出血や腫れを抑える効果があります。ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなるので注意してください。
患部を心臓より高い位置に上げることで、血液の循環を促し腫れを軽減します。座ったり横になったりして脚を高くしましょう。
これらを行いながら、痛みや腫れが強い場合は無理せず医療機関を受診してください。
捻挫は「クセになる」とよく言われますが、これは靱帯の損傷がきちんと回復しないまま関節の不安定性が残ってしまうことが原因です。再発を防ぐためには、症状が軽くても適切なケアとトレーニングが必要です。
捻挫後の回復には、バランストレーニングや筋力強化が不可欠です。特に足首周囲の筋肉(腓骨筋群など)を鍛えることで、関節の安定性が高まり、再発リスクを減らせます。
歩き方や走り方に癖があると、関節に偏った負担がかかり再発の原因になります。理学療法士など専門家の指導のもとで、正しいフォームを身につけましょう。
スポーツや長時間の歩行時には、足首を保護するためにテーピングや専用サポーターを活用することが効果的です。特に運動前に固定することで不意なねじれを防げます。
アキレス腱やふくらはぎのストレッチを継続して行うことで、筋肉と関節の柔軟性を保ち、無理な動きを避けやすくなります。
足首の捻挫を繰り返さないためには、足関節周囲の筋肉や腱を強化・安定化することが重要です。捻挫は完治したように見えても深部の安定性が失われていることがあるため、自己判断でリハビリを終えないように注意しましょう。