「肉離れ」は正式には「筋挫傷」といいます
「肉離れ」という言葉はよく耳にしますが、これはあくまで通称であり、医学的には「筋挫傷(きんざしょう)」と呼ばれるケガです。筋挫傷とは、筋肉の繊維(筋線維)が強い力や急な動作によって無理に引き伸ばされたり、一部が断裂してしまう状態のことです。
例えば、全力でダッシュをしたときに太ももやふくらはぎに「ビキッ」と痛みが走ることがあります。これがまさに筋挫傷、いわゆる肉離れです。
肉離れは、次のようなときに起こりやすいとされています。
つまり、筋肉に対して「想定以上の負荷」が急激にかかったときに、筋線維が耐えきれず損傷してしまうのです。
肉離れは主に下半身の筋肉に多く発生しますが、「どの筋肉が傷むか」は、運動の種類や動作の特徴によって異なります。
競技 | 好発部位 | 原因となりやすい動作 |
---|---|---|
サッカー | 大腿四頭筋・内転筋・ハムストリングス | キック・ダッシュ・急停止・方向転換 |
陸上競技(短距離) | ハムストリングス | スタートダッシュ・トップスピードの維持 |
バスケットボール | 腓腹筋・ハムストリングス | ジャンプ・ストップ&ダッシュの繰り返し |
テニス | 内転筋・ハムストリングス | サイドステップ・踏み込み・急停止 |
野球 | ハムストリングス・大腿四頭筋 | ベースランニング・投球後の動作 |
ラグビー | 大腿四頭筋・腓腹筋 | 衝突後の転倒・ダッシュ・踏ん張り |
肉離れは年齢によって発生しやすい部位が異なります。若年層やアスリートでは、ダッシュやジャンプなどの激しい動作により、ハムストリングスや大腿四頭筋に肉離れが起こりやすいです。一方、中高年層では筋肉の柔軟性低下などから、ふくらはぎ(腓腹筋)に肉離れが多く、ジャンプや踏み込みの動作で発生しやすくなります。
肉離れ(筋挫傷)は、その損傷の程度によって3つのグレード(重症度)に分類されます。これは、ケガの深刻さを判断するために医療現場でも使われており、治療方針や回復までの期間を決めるうえで重要な指標です。
グレード | 重症度 | 症状の特徴 | 主な症状 | 回復期間 |
---|---|---|---|---|
グレード1 | 軽度(微細損傷) | 筋繊維がわずかに損傷している状態。軽度の痛みで運動可能。 |
・少し動かすと痛い ・押すと違和感がある ・腫れや内出血はほとんどない |
約1〜2週間 |
グレード2 | 中等度(部分断裂) | 筋肉の一部が部分的に断裂。日常生活や運動に支障。 |
・強い痛み ・歩行困難 ・内出血や腫れが見られる |
約3〜6週間 |
グレード3 | 重度(完全断裂) | 筋肉が完全に断裂。手術が必要な場合も。 |
・激しい痛み ・筋肉のへこみや変形 ・広範囲に腫れと内出血 |
約2〜3ヶ月以上 |
肉離れが起きた直後は、適切な応急処置をすることが非常に大切です。これにより、損傷の悪化を防ぎ、早期回復につながります。応急処置の基本は「RICE処置」と呼ばれるもので、次の4つのステップからなります。
痛みのある部分を無理に動かさず、できるだけ安静に保ちます。運動や負荷をかけるのは控えましょう。
氷や冷たいタオルで患部を冷やします。冷やすことで炎症や腫れを抑え、痛みを和らげます。15〜20分程度を目安に、直接肌に氷を当てずにタオルを挟んで行いましょう。
包帯やサポーターで患部を軽く圧迫します。これにより内出血や腫れを抑える効果があります。ただし、強く巻きすぎると血行が悪くなるので注意してください。
患部を心臓より高い位置に上げることで、血液の循環を促し腫れを軽減します。座ったり横になったりして脚を高くしましょう。
これらを行いながら、痛みや腫れが強い場合は無理せず医療機関を受診してください。
肉離れは適切な治療を受けることで、早期回復と再発防止が可能です。 当院では、症状の重症度や部位に応じて、 最適な治療を提供しております。
鍼灸治療は、損傷した筋肉の修復を早めるとともに、 血流改善や炎症の軽減にも有効です。 痛みが強く動かせない状態でも、患部への直接的な刺激を避けながら安全に施術できます。
肉離れは放置してしまうと、筋力低下や癖になってしまう恐れもあります。
違和感を感じた段階で、早めの治療をおすすめします。
肉離れを再発させないためには、日頃のケアと 適切なトレーニングが不可欠です。筋肉の柔軟性や耐久性を高めることにより、 再発のリスクを大きく減らすことができます。
近年、再発予防や筋力強化において注目されているのが 加圧トレーニングです。
加圧トレーニングとは、専用のベルトで血流を制限しながら低負荷で行う トレーニング方法で、次のようなメリットがあります。
特にリハビリ中や運動を再開したばかりの方にとって、加圧トレーニングは非常に効果的です。 当院でも、再発予防やパフォーマンス向上を目的とした加圧トレーニングプログラムをご提供しています。
再発が心配な方、または安全に筋力を強化したい方は、お気軽にスタッフまでご相談ください。 専門スタッフが状態をチェックし、最適なメニューをご提案いたします。